岩田研の出張リポート

Vol.007

Kobilka 研究室で GPCR 研究を学ぶ (6/3-7/8, 2013 & 2/21-3/31, 2014)

Kobilka_01  昨年度、私は日米 ICC プログラムの一環でスタンフォード大学の Kobilka 研究室に 2 度滞在して研究活動を行いました(2013 年 6-7月と 2014 年 2-3 月)。

 スタンフォード大学は、サンフランシスコ国際空港から車で 30 分位 のところにあります。この地域はアメリカでもトップクラスに治安がよ く、家賃も高いです。Facebook が近くに本社を移した影響で、比較的 手頃だった物件まで家賃が高くなったとのこと。とりあえず、大学に自 転車で通えそうなアパートを借りることにしました。最初に滞在したの は 6 月でしたが、ほとんど雨がふらず毎日雲ひとつない青空でした。 京都の夏はたいへん暑さが厳しいのですが、サンフランシスコは一年を 通して暑すぎず寒すぎず、快適な気温だそうです。スタンフォード大学 のキャンパスはとても広くて芝生の広場もあちこちにあり、学生や研究 者が会話を楽しんでいる姿がよく見られました。


 滞在先の PI である Brian K. Kobilka 教授は G タンパク質と G タンパク質共役受容体(GPCR) 複合体の共結晶構造を決定するなど、その長年の成果から 2012 年ノーベル化学賞を受賞されていま す。我々は Kobilka 研とムスカリン M2 受容体の結晶構造解析について共同研究を行っています。私 の主な滞在目的は、新たなテーマの GPCR の共同研究を開始することでした。それに加えて、GPCR 研究の最高峰である Kobilka 研の研究スタイルを体感できることも楽しみにしていました。これまで の業績で見られるような重要でかつ困難なテーマにどのようにして取り組んでいるのかを目にする 絶好の機会でしたので、毎日が刺激的でした。実際に作業していると、ラボメンバー全員が実験作業 など研究に関することを何でも教えてくれ、勉強になることばかりでした。技術的な細かいところま で隠さず教えてくれるので、噂に聞いていた研究に対する誠実さを Kobilka 研全体から感じました。

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 2度の滞在を通して強く印象に残ったことは、緻密な生化学的解析と共同研究の幅広さです。 Kobilka 研の業績を見ると GPCR の X 線結晶構造解析が目を引きますが、そこに至るまでに、圧倒 的なタンパク質科学の知識をもとにした薬理学、特に生化学的な技術を駆使して X 線結晶構造解析に 適したサンプルを絞っていくという地道な作業を真摯に行っていました。そのスタイルは、生化学と X 線結晶構造解析を専門にしてやっていこうとする私の研究と適合していて非常に参考になりました。 一方で、多様な研究者(G タンパク質の専門家やリガンド開発の専門家、NMR、 電子顕微鏡、分子 動力学、シミュレーションの専門家など)と密接に研究活動および情報交換を行っていました。GPCR、特にβ2 アドレナリン受容体の様々な反応状態を、 多様な技術から情報を得てどのような技術を使っ てでも知りつくしたいという気迫を感じました。 Kobilka_03

 Kobilka 研で行われている研究活動を実際に体験することができ、私の研究 人生の貴重な財産になりました。この経験を今後の研究に活かしていきたいと 思います。最後に、貴重な経験を実現させてくださった岩田先生、小林先生や Brian K. Kobilka 教授、 Kobilka 研メンバーの方々、出張中に家庭を支えてく れた妻に感謝いたします。


   (2014年8月 寿野 良二)    

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