岩田研の出張リポート
Vol.008
X線回折実験 ; SPring-8 BL32XU (7/15-16,2014)
SPring-8 (Super Photon ring-8 GeV)へX線回折実験に行きました。SPring-8 は兵庫県の播磨科学公園都市にある大型放射光施設で、 京都のラボからは片道2時間半くらいです。私達がX線回折実験を行う際にはBL32XU・BL41XUを利用させてもらっており、 どちらもタンパク質微小結晶の回折データ測定に適したビームラインです。
膜タンパク質の結晶は微小なものが多く、特に、結晶化条件のスクリーニングを行っているような初期段階では、ほとんどが10μm以下の砂粒のような状態です。
偏光顕微鏡下では微小結晶がキラキラと光って見えますので、星空のようです。何百もの結晶化条件を試し、ほとんどの条件で暗黒の空しか見えないのですが、
その中にキラリと小さな星空を見つけた時の喜びとワクワクは一入です。
BL32XUはそんな微小結晶でも測定できる1-10μm角のマイクロビームです。また、このような微小結晶は単独でループに拾うのが難しく、ドロップを丸ごとのせることがよくあります。
その際には、大きなドロップの中の微小な結晶を探すという作業が必要で、実際にX線を当てて回折点が得られる箇所を探さなくてはいけません(Diffraction Scan)。
BL32XUはDiffraction Scanにも優れています。測定のスピードが速く、大きなドロップ全体を短時間でスキャンできます。また、
ドロップのどの位置に結晶があるのかを回折点の数や強さで相対的に可視化してくれます。
これらのすばらしい環境は、ビームライン担当者の方々のご尽力によるもので、私たちが困っていることや求めていることを細かく聞いていただき、 時には察していただいて、行く度に改良され、常により使いやすいものに進化しています。ありがとうございます。
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今回、私が持参したサンプルはLCP(Lipidic Cubic Phase)で結晶化したもので、結晶が微小でLCPドロップをまるごとループにのせました。 大きなドロップにもかかわらず、あっという間にDiffraction Scanができました。私の実験はよりよい結晶化条件を探す段階なのですが、なかなか反射が良くなる条件が見つかりません。 今回、残念ながら進展はありませんでした。月に数回の貴重なビームタイムですので、効率よく実験することが大切です。次回こそよい結晶を持って来るぞと、 SPring-8に来る度に気合いが入るのでした。
SPring-8のある播磨科学公園都市は、上郡町、佐用町、たつの市にまたがる学術公園都市で、磯崎新、安藤忠雄、ピーター・ウォーカーらの建築家や造園家の指導のもと整備されていて、
芸術性の高い建築物や公園がたくさんあります。SPring-8内の宿泊施設が満室だったため、今回は県立先端科学技術支援センターの宿泊施設を利用させていただいたのですが、
こちらもなかなか面白い建築物でした。実験の都合で利用できませんでしたが、大浴場もあるようです。“光都”という名前を持つ、有名な建築家達が設計した都市。実験の合間に
散策してみるのもいいかなと思っています。
(2014年9月 名倉 淑子)
SPring-8 HP: http://www.spring8.or.jp/ja/