岩田研の出張リポート
Vol.006
岩田研リトリート2014(6/16-17,2014)
今年も6月16日から17日にかけてJSTのサポートにより「研究加速:膜蛋白質構造基盤プロジェクト」のリトリートを行いました。 今回は理化学研究所SACLA応用技術開拓グループの研究室メンバーにも参加してもらいました。参加者が40人以上にのぼり、大変に盛況な会となりました。
今回も昨年と同様に、京都のメンバーとオフサイトで共同研究しているメンバーが交互に話をする形をとりました。
1日目最初のスピーカーは静岡県立大学の伊藤君で、プロトン共役型のオリゴペプチド輸送体の基質特性について、サッカロミセスを用いた巧妙な評価系をもちいた解析の結果を示してくれました。
次に京都の研究室の小林准教授が、彼のアクティビティー全般をカバーする話をしてくれました。Brian Kobilkaとの共同研究もいろいろ成果を上げており、
これからが楽しみです。技術員の人達からも分かりやすい話でよかったと評判でした。大阪大学の溝端君は、ガンをターゲットにした抗体医薬の話を中心に、
SACLAを用いた実験の結果について紹介をしてくれました。京都の研究室での結晶化用抗体作成の進展については、名倉さんから報告がありました。
我々が作った抗体を用いた膜蛋白質構造解析の成功例も増えており、汎用的な技術になってきた感があります。最後にJSTの今林さんから、JSTの事業紹介と若手研究者へ
の研究費申請におけるアドバイスをいただきました。
夜は食事のあとポスターセッションを行いました。研究室出身の2人がそれぞれ10月と12月に結婚されるということで、皆でお祝いをしました。おめでとうございます。さらに僕の51歳の誕生日のお祝いまでしてもらって、大変光栄でした。老骨にむち打ってもうちょっと頑張りたいと思います。
2日目は、朝のレクリエーションの後、短いセッションを行いました。まず理研の南後さんより、SACLAにおけるデータ測定システムの開発状況に関して報告がありました。 京都での蛋白質生産とSACLAでのデータ測定を連携させるのが研究加速の肝なので、僕としてはとても心強い報告だったと思います。続いてイム君が、受容体を活性化状態に 固定する抗体と受容体との複合体について報告してくれました。抗体を用いて各種状態の構造を固定することは今後ますます重要になっていく技術だと思います。 最後に高エネルギー加速器研究機構の牧尾君が、セレンを組み込んだ糖鎖を用いた位相決定法について紹介してくれました。化合物にラベルを入れる技術は、 我々のように分解能が限られた結晶で構造解析を行う者にとって、今後ますます重要になってくると考えられます。そういう点からも興味深い報告でした。
天気にも恵まれ、サイエンスにおいても懇親に関しても、良いリトリートができたと思います。来年も是非開催し、メンバー間の研究そして個人的にも交流がより深まるような 会にしたいと思います。最後になりますが、今回のリトリートのとりまとめを行ってくれた吉田さん、行事関連をカバーしてくれた植村さんと実際の仕事をやってくれた研究室の 学生さんたち、そしていつも非常に親切にサポートしてくださる北林さんはじめ夢舞台の皆さん本当にありがとうございました。
(2014年7月 岩田 想)