現在の分子細胞情報学研究室は,科学技術振興機構のERATO “岩田ヒト膜受容体構造プロジェクト” を母体に,2007年に発足しました。それまでも川崎のレンタルラボで独立のオペレーションを行ってきましたが、京都大学に移転するにあたり,医学の進歩に役立つ生命現象理解に重点をおき研究を進める方針をたてました。
生体の恒常性維持や病態発生といった医学的にも重要なさまざまな生命現象の素過程は,微視的には生体分子の「かたち」や分子間相互作用という物理量を基盤として成り立っています。当研究室では,種々のヒト疾患の発症機構に関わりかつ多くの医薬品の作用点となっている膜タンパク質やその複合体を主な対象とし,主にX線結晶構造解析手法を用いて構造解析研究を進めています。解析した構造を元に,計算機を用いた新規医薬品の合理的な分子設計・探索,分子構造の動きのシミュレーションなどの研究にも意欲的に取り組んでいます。また,多くの共同研究者と共にタンパク質の機能解析を行うことにより,物質構造科学の立場から細胞機能制御の原理を理解することを目指しています。
さらに,単に構造解析を行うだけでなく,その技術開発にも重点を置いています。抗体フラグメントを用いた膜タンパク質結晶化法の開発や自由電子レーザーを使った新しいX線データ測定方法の開発など,生物から物理にいたるまで幅広い分野で技術開発を進めることで,膜タンパク質構造研究にパラダイムシフトを起こすことを目指しています。そのため理化学研究所やイギリスのダイアモンド放射光施設をはじめとする多くの研究機関と共同で研究を進めています。
得られた成果を広い分野の研究者に還元することを目標として,創薬等支援技術基盤プラットフォームを通して技術支援を行い,また,企業との共同研究を通して基礎技術を実際の創薬に役立てる試みも行っています。今年開始した研究室リトリートも,いずれは国内の膜タンパク構造研究者のフォーラムへと発展させたいと考えており,日本における膜タンパク質構造研究の情報発信の拠点になることを目指しています。
構造生物学は他の生化学的,分子生物学的,物理的な手法等と組み合わせることにより,非常に有効な生命現象理解のためのツールになります。共同研究者として,そして実際に私たちの研究室に参加することで,生命の神秘を分子の目で解き明かしていきませんか?
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